大学を卒業した頃は、まだワープロを使っていた。何かをまとめる時には、ワープロに感熱紙をさしこんでは印刷をしまくった。ワープロの開発に、メーカーがしのぎを削っていた。
まだ、「Windows 95」が発売される前の話だ。
当時の自分は、ひらがな入力で文章を作成していた。ローマ字入力が良いとか悪いとか、そんなことは特に考えなかった。ただ流れで、ひらがな入力をすることが当たり前にしていた。
入社して2年後の1995年、「Windows 95」が発売され、PCの世界が身近なものになった。会社にもすぐに導入され、様々なソフトに夢中になった。インストールされているゲームにも夢中になったね。
その頃、先輩に提案されたことは、ローマ字での入力。ひらがなで入力するよりも効率がいいって。アルファベットの位置さえ把握しておけば、日本語にも英語にも対処し易い、そう言われた。
一理あったので、タイピングソフトを使って練習を始めた。まだ自分のPCを持っていなかったので、会社のPCを使う。当然のことだが、仕事中に練習はできない。本社勤務の頃だから、昼休みはきっちりと60分取れた。食事は15分以内、残りの45分間、毎日PCを使って練習することにした。
こういう時になると、自分は燃えるタイプだ。「あ」一字だけを入力するにしても、ローマ字入力だと「あ」にあたる「A」の位置が2段下になる。慣れるまでは毎日が格闘。格闘ゲームなんかいらない、タイピングソフトそのものが敵だったんだから。
大体の社員が、ゆっくりと昼ご飯を食べてから一息。ゲームを楽しむ先輩以外はいない。とことん使わせてもらった。その内だんだんと、ローマ字入力が身近になってきた。そうなると楽しい。
個人的にも、PCが必要だと考え、当時最新だった東芝のデスクトップ「BREZZA」を借金して30万円で購入した。信じられないかもしれないが、HDDは10GBもなかったと思う。今使っているノートPCのSSDは1TB。進歩のすごさを感じるよ。
こうして、会社でも自宅でもローマ字入力に慣れ親しむことができた。確かに入力は効率よくなって時間は短縮された。特に仕事をする上では楽になったと思う。
2000年から個人で仕事をするようになってから、検索中心の生活になり、入力スキルがガタ落ちした。前回の手術後に3年間事務職に戻った時、そのレベルダウンが悔しくて、また自宅で練習し直した。思うようにいかず、時の早さを恨めしく思いもした。
最近、先代の無線キーボードに寿命を感じ、キーストロークの浅い新型にしたら、浅さに対して指先が慣れていかない。キーボードを前にしながら、独りごとで「くそ!」を繰り返す毎日だ。
いずれ、音声だけで完璧に近い入力をできる日もくるだろうけど、脳の活性化のためにも大切、今は指先に力をこめる。
ドローン操作のための、リモコンをいじる指の方が慣れてきた。休業中にもかかわらず、室内で血圧が上がる毎日だ。