久しぶりに通った道沿いに、気になっていた牧場がある。千葉県富里市にある若草牧場さん。5年ぐらい前に、毎日横を通って通勤していたが、なかなか馬に会うことができなかった。今日は幸運だった。海からの帰り際、坂を上ったあたりで、馬の白いお尻が目に入った。やっとご対面、カメラを手にして柵のわきへ。
自分は競馬をしないけど、大垣にいた頃、馬が好きでたまらないっていう後輩がいた。好きだから競馬をするみたいな感じに思えたけれど、競馬自体が好きなわけじゃなかった。馬そのものが好きだったみたいで、長い休みの時、北海道まで馬に会いに行ったりしていた。その気持ちが、あまりよくはわからなかった。
学生の頃、オグリキャップという名馬がいて、それはそれは競馬の世界を盛り上げていた。競馬をやらずとも、誰もがその名を知っていたぐらいだ。引退した後は、北海道にいたと聞いていたから、彼は会いに行ったのかもしれない。あの頃はオグリのぬいぐるみも流行っていて、窓越しに飾ってある車をよく見たものだ。
でも今日、青空の下で馬を見ていたら、今さらだけど彼の気持ちがわかるような気がしたんだよね。望遠で馬たちの顔を拝んでいただけなんだけど、馬の顔っていうのは本当に優しい。人の顔に例えれば、細面ってことになるのかな。真正面から見ていると目も隠れているようだけど、実はよくこちらを見てる。
草を食べているところを、望遠を使って顔を上げる瞬間を狙って待っている。チラ見されるんだけど、食べることに夢中の時はチラ見するだけで又食べ続ける。よくあれだけ食べるなって思うけど、あの体なら必要な量なんだろうな。足の細さのわりには体が大きく感じるものね。ムシャムシャがよく似合っていたよ。
この茶色のお馬さん、望遠で見ていたら、途中からずっとこちらを見ていたんだ。本当だよ、目をそらさなかったもの。初対面の自分が気になっていたのかもしれないけど、望遠だから見えていただけ。あの体のわりには小さく見える目で、よく自分のことがわかるなって思うと、愛おしくもなってくる。
馬に乗る人たちが、顔を撫でているシーンってけっこうあるでしょう、映画なんかでもね。馬って古来から人に身近な動物なんだろうけど、お互いに信頼関係をもてるようになれるって、憧れも感じるな。人よりも馬を愛してしまう人だっているのかもしれない。馬の目を見ていると、その気持ちがわかる気もするね。
帰りにいつもの肉屋さんに寄り、コロッケを買った。このお店の売りの商品に、実は馬肉がある。食べたことはないけれど、美味しいって話だ。
どんなことでもそうなんだろうけど、こういう時って複雑な気持ちになるよね。飲み屋さんで馬肉を注文することもあるし、馬だけが牛や豚よりも特別な生き物ではないんだけど、ああいう目を見てしまうと、複雑な気持ちにもなるよ。
人間は実際のところ、勝手な生き物なのかもしれないね。