集中治療室のベッドの上、尿道にチューブを入れているから、当然身動きはとれない。右腕には点滴のチューブ、ベッドは少し頭を上げた状態にしてある。そのまま、翌日の朝まで寝てるだけ。
5年前も同じような状況だったかな。ただ手術後は、すぐに病室に戻った上での集中治療だった。周りのベッドには一般の患者さん達が寝ていた。今回はまったく違う。
当日は他に5、6人が手術を行っていて、カーテンだけを仕切りにして、右と左に患者さんが寝ていた。昼は寝たり起きたりで時間を過ごしたから、痛みもあって夜はなかなか寝つけない。
2時間おきくらいかな、いやもっと短い周期で起きていたのかもしれない。定期的に、当直の看護師さんがやってくる。水分を口にできるように、右手の横に水筒がおいてあるんだ。
ちなみにこの水筒、患者本人が前もって準備することになっている。今回用意した水筒は、前回でも使用したもの。手を伸ばすだけで飲めるように、ストロー付きのものがいい。手術前後に使うバスタオルも、3枚ほど自前で準備をしてある。
そうそう、T字帯っていうふんどしみたいなもの、これが大切なんだよね。尿道にチューブを刺しこむわけだから、パンツだとチューブの邪魔になる。ふんどしタイプならやりやすいわけね。これが寝返りを打てないわりに、案外ずれていってしまうんだ。
こんな感じで、寝たり起きたりをくりかえしながら、当日の夜を過ごしていたわけ。
でも、この夜に一番気をもんだことは、血圧の異常なまでの上がり方だった。最高血圧がマックスで200にまで迫ったりして、警告音がピーピーピーピー耳のそばで鳴り響いていた。
さすがに、これには参った。5年前にはこんなことが無かったはず。首を右にひねると、上がっていく数字を見ることができた。自分でも驚きだったね。手術した左肩よりも、血の方が気になってしかたがなかったよ。