ドラマ「深夜食堂」が好きだ。原作よりも先にテレビで見てしまったので、特に原作は読まない。とにかく内容に味があっていいんだ。深夜に開店するというのがいいし、何よりも、人が肩書を必要とされない憩いの場所なんだ。
オープニングの歌「思ひで」とこの映像、ああ今から始まるんだって期待が高まっていく。新宿の歌舞伎町付近の靖国通り、運輸業をしていた頃は昼夜を問わず、本当によく通ったんだよね。毎日通っている人からすれば、大したことではないんだろうけど、毎日ではなかったからこそ感慨深いものもあるんだよ。
自分の生活は、昼間は動いて夜は眠るのが基本。運輸業をしていた頃は、昼夜の時間のバランスが、かなり崩れていたけどね。まあ、深夜遅くに寝ることがあっても、朝は早い時間から体が勝手に動き出す。夜中の1時過ぎまで起きていても、太陽が昇れば体が反応して起きてしまうって感じだ。
この食堂は、深夜12時に開店してから朝の7時くらいまで営業している。深夜に仕事をしている人だけが常連かと思いきや、昼間に仕事をしている人も集まってくる。ここに来る人達は皆、何か心が温まるものを求めてくるんだろうね。喜怒哀楽があふれているんだ。小林薫が演じるマスターの生き方に憧れも抱く。
このお店に行く時は、肩書を捨てていく方がいい。入ってしまえばみな同じ、ただの飲み友達、そして友人。名刺は必要ない。お酒は3本までと決まっている。メニューはお酒と豚汁定食だけ。できるものなら注文すれば何でも作ってくれる。
ドラマだから、漫画だからってわけじゃない。今となっては、人が集まって語り合うには理想的なお店だと思う。昭和や平成の初め頃なら、この手のお店もけっこう残っていたんだけどね。
今だってあるかもしれないけど、かなり数が減ったような気もするよ。この旧城下町の佐倉だって、赤ちょうちんの個人店はほとんど見られない。あるのはチェーン店ばかりだ。今のコロナ下の状況では、シャッターを下ろしたままの店も多くなった。
こういう心が温まりそうな場所に集まって、飲みながら語り合って同じ鍋の中で一緒に煮込まれてしまえば、肩書なんて見えなくなるんだ。そこにいる人達は皆、胸の内を語り吐き出し、そして自分自身をさらけ出す同じ具にすぎないんだよ。
社会で生きる上で、肩書は必要だろう。
でも肩書にとらわれ過ぎると、狭い世界に生きることにもなる。必要以上に自分をしばるよりも、自分をさらけ出す時間をもつことは大切だと思う。
自分をさらけ出せる場所としての深夜食堂、これからも欠かすことなく通い続けるつもりだ。