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クラッチ板を破損させ、ダブルクラッチへ。

西濃運輸という業界最大手の一角を担う運輸会社に入社したが、マニュアルの運転はすごく下手だった。新卒の時に店所配属から始まっていたら、マニュアル車に乗る機会も多かっただろう。でも本社勤務では、マニュアル車に乗る機会はほとんどなく。あってもカローラバンぐらいで、トラックなどはまずなかった。

*真ん中が クラッチ板と言われるもの

そんな自分が借り物とは言え、2㌧のマニュアルのトラックで仕事を始めた。初日に横浜から佐倉まで、いきなり一般道90㌔走ってトラックをひっぱって来た。この時はさすがに緊張した。免許を取ってから既に10年近く経っていたが、初めて本格的にマニュアルを運転、しかもトラックを。よく走れたものだ。

既に退路を断っていたから、走るしかなかった。下手クソなクラッチ操作を繰り返しながら、なんとか佐倉に到着。着いた時点で、かなりクラッチ板をすり減らしていたと思う。翌日から少しずつ仕事を始めたが、同時に少しずつクラッチ板をすり減らしていった。要はクラッチ操作の典型的な初心者だったわけだ。

*クラッチ操作の仕組みがわかりやすい

時間が経つにつれて、走行中に燃えるような臭いがし始めていた。クラッチ板が摩擦を起こしていたんだ。火が出るわけじゃない。クラッチ板が必要以上に踏み過ぎていたってこと。その時は理由がわからない。仕事も増え始めていた頃で、毎日休む暇もない。ある日とうとう、都内の国道で操作不能になった。

横浜への配達の帰り道、異変に気づいて片側3車線の道をすぐに一番左側へ。とりあえずそれが良かった。道の真ん中での故障は免れた。路駐の見回り隊もいない頃で、左わきに停めてレッカーを頼む。レッカー車の助手席に座り、いすゞの工場へ。代車のトラックを借りて佐倉まで。工場を出た時は恥ずかしかった。

初心者がよくやる失敗だと、先輩格の仲間が話していた。借り物のトラックの上、資金もない。修理代を肩代わりして頂いた。前回にクラッチ板を交換してから、日も浅かったらしい。修理代を肩代わりしてもらったことが、猛烈に悔しかった。日常点検を個人的にお願いしていた、修理のプロ的な先生に指示を仰いだ。

*マニュアルは慣れると職人気質でかっこいい

1速発進をして、ダブルクラッチにしろ。先生はこう言った。

トラックは2速発進が日常的。でもそれが正しいわけじゃない。何のために1速あるんだという話になる。坂道発進や、重量物を積んでいる時に使う。後はひたすら2速発進。先生が言うには、過去に40万㌔以上走行して、初めてクラッチ板を交換した人がいたとか。それなら自分もと、さっそく修行が始まった。

そもそもダブルクラッチとは何か。シフトを上げる時、クラッチを半クラで操作、クラッチを踏みっぱなしになる。だから操作が下手だと、長い時間クラッチ板が操作されて、クラッチ板のすり減り方が早くなる。そこで、一旦クラッチから足を離し、ニュートラルの状態にして瞬時にクラッチを踏み直す

普通ならシフトを1つ上げるごとに1回クラッチを踏むところ、2回踏むことになる。1速から5速までなら4回踏むところを、倍の8回踏むことになる。これを口だけで説明するのは難しい。慣れるまで練習するしかない。体に覚えさせるしかない。足首のスナップをきかせる訓練もしてみた。慣れてくると楽しくなるんだ。

*大型トラックの近未来のコンセプトカー

2年後に排気ガス規制に対応するため、新車でトラックを買っても1速発進ダブルクラッチを続けた。その後、トラックを手放すまで30万㌔近く走っていたが、クラッチ板は半分しかすり減っていなかった。先生に、クラッチの心配はしなくて大丈夫だと言われた。操作が上手いと言われた。嬉しかったね、あの時は。

性格のこともあるとは思っている。ただ人間は、特にお金がからんでくると、真剣さが増してくるものらしい。

*トランスフォーマーならトラックも友人?

ちなみに現在は大型トラックも、オートマの時代だと思う。オートマの方が燃費もよくなっている。何よりも運転手が高齢化していく時代にあって、自動運転のトラック開発は急がれるべきだ。

職人気質的な運転には魅力が溢れているが、いい意味で人は、楽になっていくべきだ。すでに数年前から、高速道路での自動縦列走行の実験は始まっている。やがてトラックそのものが意思を持つのかもしれない。まさに、トランスフォーマーの世界だ。

「クラッチ板を破損させ、ダブルクラッチへ。」への2件の返信

トラックを運転するっていうのは大変な事なのですね
何よりきみさんの技術は素晴らしいということがわかりました
30万キロで半分しか擦り減らなかったことに驚きです!
プロドライバーさんの方型に改めて敬意を表します

春、夏への前奏曲さん、こんにちわ。

ご丁寧に、ありがとうございます。
もっと長く運転に生きている方々は、見ていて気持ちいい運転をします。
交通戦争の毎日、プロの方々には、頑張って頂きたいですね。

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