昨夜、久しぶりにNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』を視聴した。初めから終わりまで、まともに見たのは久しぶりだ。
自分はNHKの番組は好きだが、最近の番組は過去のものに比べると民放を意識し過ぎていて、正直に言えばあまり好感をもてない。『進撃の巨人』の放映をNHKが始めた時は違和感さえ感じた。過去のNHKのアニメと言えば、『未来少年コナン』のように、誰が見ても共感できるような人の心に響くものがあった。
この『プロフェッショナル 仕事の流儀』という番組、過去の番組『プロジェクトX』の現役版みたいなものだろう。プロジェクトXも始まった頃は感動して、よく涙が流れたものだ。ちょうど自分の仕事が上手く行かなかった頃で、共感しながら自分自身を励ます上でも、もってこいの番組だった。
瀬戸大橋建設にまつわる話や黒部ダム建設にまつわる話、ラグビーを介した泣き虫先生の話やビクターのVHSビデオ開発時の話など、今見直しても素晴らしい出来栄えだった。中島みゆきさんのOPとEDの曲は、その選曲の素晴らしさが胸を打った。ドラマ仕立てだから多少は作り物めいていても、素直に感動できた。
近頃のNHKの番組は、何かがおかしくなっている。例えば気象情報の時間、ちょっとした時間差をつけてタレントまがいの気象予報士たちがに登場してくる。以前は人数も少なく、お堅いと言えばお堅かったかもしれないが、情報を伝える者の真剣さが伝わって来て、役者が変わるような雰囲気はなかった。
これじゃ民放と変わらないじゃないか、何のために放送受信料を払っているんだと思い始めたりもしていた。受信料を払っても特典があるわけでもない。アニメはますます民放化して来たし、どこに差があるのかと問われると、極論を言えばCMがないことぐらいかもしれない。CMに近いモノも多くなっているけど。
昨夜の番組にしても、たまたまテレビのスイッチを入れただけ。ただ、ヤマト運輸の姿が映れば、やはりチャンネルはそのままになる。創業者の小倉昌男さんへの思いは、お世話になった西濃運輸へのそれよりも大きい。氏の考え方や行動の仕方は、今なお尊敬できる経営者の1人として、自分の中に生き続けている。
時代が変わり、ヤマト運輸を取り巻く状況もかなり厳しいものがあるが、決算の結果が過去最高益と聞けば、底力の違いを思い知らされる。その基礎を創ったのが小倉さんだから、ヤマト運輸が取り上げられていると知れば、NHKではなくても視聴したくなってしまう。とにかく、久しぶりにじっくりと視聴した。
結果として、素晴らしい内容だっと思う。もちろんドラマ仕立てだし、ここは創り過ぎだろうと思う点もあった。でも、紹介されていたトップクラスの営業ドライバーの姿勢は、小倉さんの考え方に準ずるものがあって嬉しかった。この方の個人としての考え方も立派だった。お客様のためにという思いが溢れていたね。
歳は30歳よりも前、自分が同じ歳だった頃に比べると、出来すぎとも思えるぐらいの人物だ。一日に走る距離と配達件数、仲間への思いとリーダーとしての立場。必ず紹介される過去の挫折経験を聴いていて改めて思った。挫折から這い上がってきた人間は強いなってことと、人生はタイミングだなってこと。
人生がすべてスムーズにいくのなら、時間に無駄も生じないから良いことばかりにも思える。でも、そういう人生はまずあり得ないし、何よりもつまずけるって大切だと思う。つまづくのは真剣になっている証拠だ。何でも無難にこなそうとすれば、どこかで無理が生じる。それよりも失敗をして、教えを乞う方が学べる。
それと、タイミング。自分なんかタイミングが悪すぎてね、恋愛にからむ事なんか恥ずかしい結果ばかりで、寅さんを地で行く。でも頑張っていると、タイミングよく幸運が向こうからやってくることだって。人間関係もそう。この方はタイミングよく人間関係に恵まれて、それを浮上のきっかけにして頑張ったんだ。
この方は若くして、すでに立派なリーダーだった。仕事に対する考え方を聴いていると、さらに貪欲に学んでもっと立派なトップになっていける人物に思えた。小倉さんが見たら喜ぶだろうな。利益も後からしっかりとついてきている感じ。宅急便が始まった頃の考え方みたいで、原点をしっかりと背負っていた。
ヤマト運輸という会社が、いっそう好きになれた。大きな組織だから、すべての人が一律に同じ姿勢だとは思っていない。それでも絶対数が多いから、気持ちの持ち方ひとつで様々なことを貪欲に学べる。母ネコが子供を運ぶ思い、時代を超えて受け継がれて行ってほしい。ファンの1人として、あらためて思った。