少し前になるが、元横綱の稀勢の里が、早稲田大学の大学院を卒業し、その後インタビューを受けた時の記事を読んだ。
稀勢の里は体格もよく、外見は相撲取りらしく思えた。ただ、気が優しいのか、大関になってから、なかなか優勝することがなかった。土俵に上がっては、淡々とマイペースで相撲をとっていたような感じだった。自分は、あまり好きにはなれなかった。
だが、人気はあったようだ。相撲を愛し、地道に相撲を取り続ける姿勢が良かったのかもしれない。横綱に昇進した時は、久しぶりに日本人から横綱が誕生したものだから、世間の喜び方は一段と大きかったようだ。本当に久しぶりだったものね。
ただ、小学生の頃から相撲を見てきた者としては、横綱になるのが少し遅すぎたように感じていた。
北の湖、貴乃花、輪島、千代の富士など昭和の相撲取りは、横綱ではなくても本当に強かった。大関でも十分に強かった。横綱になる人には勢いがあった。あっという間に横綱の地位までかけあがり、その後は優勝を重ねた。ウルフと呼ばれていた千代の富士には、その強さと体格などに対して憧れをもった。
だから、稀勢の里が30歳を過ぎてから横綱になったことは、嬉しい反面、遅すぎた気もした。
稀勢の里は2度優勝したが、その後は怪我がもとで休場を続け、そのまま引退へと進んだ。横綱になってから、わずか2年後のこと。残念などと思う余裕もなかったね。
でも、大切なことは、その後の稀勢の里の姿勢だ。
そんな稀勢の里が、早稲田大学大学院のスポーツ科学研究科の修士課程を修了した。相撲部屋を持つ時に備えて、学んだらしい。これまでに例のない、新しいタイプの部屋を作りたいとか。
- 部屋の土俵を2つ3つ備えて、稽古を効率よく行う。
- ビデオカメラを導入して、指導につなげていく。
- ちゃんこ鍋にこだわらず、運動前にたんぱく質を補給する。
- 部屋専用の筋力トレーニングルームを備えつける。
など、まあ古い慣習からの脱却などを話していた。
古い伝統が支配する世界だ、見直しや改革は簡単には進まないだろう。必ず反対する人が出てくると思う。
でも、30歳を過ぎて初めてパソコンと向き合い、論文を書いて学生を前に発表したんだ。それも、20人中3位の評価だったとか。まだ若いとは言っても、新しい時代を見据えて学んでみようという考え方が大切だと思うんだよね。
野球の世界なんかもそうだけど、偉大な選手だった人が、必ずしも立派な監督になるとは限らない。相撲の世界も似たようなものだろう。白鵬が偉大な横綱であるとしても、立派な親方になれるかは未知数だ。やってみないことにはわからない。
稀勢の里の親方としての未来も、今の時点では未知数だ。
だからこそ、何かを変えたいという気持ちは、大いに尊重されるべきだ。それは何も相撲に限ったことじゃない。これからの自分だって同じこと。学びなおしの時期に早い遅いはない。やってやるという心意気さえあれば、何かを必ず成し遂げられるはずだ。
稀勢の里からの、ちょっとしたサプライズだった。